技術提案事例

深絞りブロー成形の実現。枠付きブロー成形技術による対応

お客様の課題:深絞り品の肉厚が安定しない

ブロー成形において、箱型のような深さのある形状(深絞り)の製品を成形しようとすると、パリソンが底の角まで均一に伸びず、肉厚が極端に薄くなったり、破れたり(パンク)するという問題がありました。従来のブロー成形技術では転写率が低く、深絞り形状への対応が困難でした。

技術的背景:深絞り成形における課題と特殊工法

ブロー成形金型

ブロー成形における「深絞り」とは、製品の開口部の面積に対して深さが大きい形状を指します。このような形状では、パリソンが金型内で大きく引き伸ばされるため、特に底部のコーナー部分で著しい肉薄化が生じます。

この問題を解決するためには、パリソンが金型内で均一に延伸されるように制御する特殊な技術が必要です。その一つが「枠付きブロー成形」や「Wブロー」と呼ばれる工法です。これらの工法では、メインの金型が閉じる前に、キャビティの外側に設けられた枠(フレーム)でパリソンを先に挟み込み、パリソン内にある程度の内圧をかけた状態で成形を行います。これにより、パリソンの過度な垂れ下がり(ドローダウン)を防ぎ、金型全体に均一に材料を行き渡らせることが可能になります。

扶桑精工の提案:枠付きブロー成形金型の設計・製作

扶桑精工は、この深絞り成形の課題に対し、「枠付きブロー成形」を可能にする専用金型の設計・製作を提案しました。

この金型は、製品形状を形成するキャビティの外側に、パリソンを予備的に保持するための枠がスライド機構などで組み込まれています。成形サイクルにおいて、まず外側の枠がパリソンを挟み込み、その後、メインの金型が閉じてブローイングを行います。この二段階の動作により、パリソンは常に適度なテンションが保たれた状態で延伸されるため、深絞り形状であっても底部のコーナーまで均一な肉厚で成形することが可能になります。

枠付きブロー成形金型の導入により、これまで不可能とされていた深絞り形状の製品の安定した生産が実現しました。これにより、お客様は製品デザインの自由度を高め、より機能的で付加価値の高い中空成形品を開発することが可能となりました。

扶桑精工は、一般的なブロー成形に留まらず、深絞りのような特殊な成形課題に対しても、最適な金型構造を提案できる高度な技術力を有しています。